「メンタル」×「英語学習」のコーチングってどんなもの?リアルケースの紹介

こんにちは!英語学習コーチの船橋由紀子です。

私はこの3年ほど、アドラー心理学をベースにしたメンタルコーチングを、英語学習のコーチングに掛け合わせて提供しています。

今回は「メンタル」×「英語学習」のコーチングってどんなもの?ということで、あるクライアント様とのセッション(90分・zoomにて)をご紹介しながら、コーチング解説をしてみます^^

(クライアント様の許可をいただいております)

クライアント様 Aさんのプロフィール

30代の経営者(女性)。ベンチャー企業でご活躍、海外に子会社もありグローバルな経営展開の一環として英語学習を再スタート(英語レベル上級者)。

セッションの目的

オンライン英会話を毎日25分続けているが、もっとできそうなので、毎日の学習時間を30分か60分プラスしたい。その学習内容を決めたい。

冒頭で語られる実際の悩み

コーチング冒頭から、Aさんは「英語の場になると、つい上手い人と比べてしまう」ことや「同じフレーズばかり使ってていいのか?と感じる」「自分の英語を減点法でさばいてしまう」など、英語をしゃべる自分に対して「引け目」を感じている状態でした。

そこで、いきなり学習プランを作るよりも、この「引け目」を紐解くメンタルコーチングの後、学習の見直しをすることにしました。

英語上達の先に広がる「理想の未来」を確認する

一旦現状の悩みを聞いた後で、「1年後、英語がペラペラになって、どんな未来を実現していたい?」と問いかけました。(注)英語が「ペラペラ」という言葉は、普段は避けます(曖昧すぎるため)がこういう時は敢えて使います。

目の前の悩み事があると、どうしても視野が狭くなりがちです。が、現状の制約に縛られない未来の自分をイメージしていただくことで、「英語学習に取り組む、本当の目的」とつながることができるからです。(アドラー心理学の「目的論」)

すると、「グローバルなイベントに登壇して、英語で発信している姿」が語られました。そこでは「英語を駆使して自社のサービスを語ることで、各方面の方から”信用”を得られる自分がいる」のだそうです。

ここから、Aさんの語った言葉の中で、抽象度の高い言葉を掘り下げていきます。

「信用」を得られる自分とは?→「自信」がある状態
「自信」とは何だろうか?→「誰にどう思われようが、人の目を気にせずに、”自分たちは自分たち” と、自分たちが思い描くことをやりきること」

と語られました。

また、この「自信」は、今すでに日本語でのビジネスでは発揮できている状態だともおっしゃいました。

自分の中の「もう一人の自分」を明らかにする

理想の未来とつながると、クライアントは「リソースフル」と言う状態になります。いわゆる「私はできる!やれる!」という「効力感」が高い状態です。

そんな「リソースフル」になったAさんに対して、こんな問いかけをしました。

「もし会社の部下が、英語がとってもうまくて仕事もできるのに、自分はできないと引け目を感じている様子だったら、なんと声を掛ける?」と。

すると、

「あ!そんな状態はもったいない!!!どんどん喋ればいいのに!」

と口にするAさん。

ここでは仮に「会社の部下」としましたが、これは英会話の状況におけるAさん自身のこと。

部下と想定することで、自分のことを客観的に見ることができたわけです。こんな風に視点、視座、立場を変えて物事を見てもらうことで、「認知(思い込み)」に変化が生まれます。(アドラー心理学の「認知論」)

さて、ここまでで「自信があるAさん」と「引け目を感じてしまうAさん」と、2つの自分がいることがわかりました。

「全く違う人格が自分の中にあって、びっくりしたー!」(by Aさん)

自分の中の自分を、より理解する

ここからは、「引け目を感じてしまうAさん」を、より理解していきます。

あらゆる感情・行動・思考には「肯定的な目的がある」からです。この「引け目」という感情も、何かしらの目的があって出てくるのです。(アドラー心理学の「全体論」)

「引け目を感じてしまうAさん」が時々顔を出す「目的」があるとしたら、それは何なんだろう?と聞いてみました。

すると「こっちの自分は、まるで大学生なんです。間違えるのが怖い。評価判断されるから、ちゃんとしなきゃダメ、っていう。。」と。そして「この自分は”妹”としての自分なんだ」とおっしゃいました。

Aさんは、口数の多い祖母や姉に囲まれ育ち、彼女たちとの中で調和を取るため「家族の気に障らないように振る舞う」という姿勢が身に付いたのだそうです。ただ一方で、同時に身につけた(家族の気に障らないようにするための)人を観察する力」は、現在「思慮深さ」という強みになり、仕事の武器になっているともわかりました。

また、「自信のある自分」も、実は最初から居たわけではなかったそうです。仕事で役職に就いた後に周りの支援者から場数を踏ませてもらったことで、自信のある自分が育っていったそうです。この時、Aさんは「最初は下手でも、打席に立ち続けることが自分を変えるのだ」という信念を持つに至ったそうです。さらにこれは、英会話の上達にも当てはまることに気づいていただきました。

このように、「自分の中にいる自分」を明らかにし、その存在価値を確認することはとても大事です。より「自分の中の自分」とうまく付き合えるようになるからです。

ここまでの気づきを、英会話のシーンとつなげてみる

自己理解が進んできたところで、ここまでで語られたAさんのキーワードを、英語学習や英会話とつなぎ合わせていきます。

「英語でのコミュニケーションにおいて、“思慮深さ” や “自信” を大事にするって、具体的にはどういうことだろう?」と聞いてみました。

すると、「英語力があるに越したことはないが、人格や経験が何よりも大事です」という言葉が返ってきました(ここで、Aさんの英会話に対する認知(思い込み)がセッションの冒頭とは完全に書き換わっていることがわかります)。

日頃、英語のできる社員に交渉ごとを任せることがあるそうですが、それだけでは不十分な事も多いのだそうです。実際、英語が得意な社員よりも「これまで多くのことを積み上げてきたAさんと面談したい」という人達が多いことを改めて思い出されました。

そこで、今後のアクションとして、英語学習とは別に「自分の人間性や経験を改めて見直す」ことを決めました。

このように、「思慮深さ」や「自信」というAさんが大事にしたいキーワード(価値観)は、まるでメガネのようなものです。「引け目」を作り出すメガネを外して、本当にかけたいメガネをかけてみたわけです。すると、同じ「英会話」に対しても捉え方・解釈がガラリと変わってくるのです。

英語学習における新たなコンセプトを定める

終盤です。メンタルコーチングの締めくくりをしながら、英語学習コーチングの観点を取り入れ、学習プラン作りを進めていきました。

改めて、現状継続している「25分のオンライン英会話レッスン」の満足度を伺いました。

すると「10点中7点」という答え。

「毎日取り組めているし、いきなり学習をマッチョにしてしまうと無理があるので、出だしとしてはOK!だけど、無難。つい、引け目を感じてしまい、何事もないように穏便に・・・というモードが出てしまっていた」と振り返っていただきました。

そこで、「このまま無難なレッスンを続けたら、どうなりそう?」と伺うと、「何も起きない」と。そして「無難な経営者に対して、投資や応援をしてくれる人はいない!」とおっしゃいました。

そこで、

「無難なレッスンの代わりに、どんなレッスンにしたいのか?」と尋ねました。(アドラー心理学の「主体論」)

Aさんの口から出てきた言葉は「自己表現に妥協しない」ということ。

「将来、イベントでビジョンを語っている自分をイメージしたのに、日々のレッスンで自分の意見を語らなければ未来の自分に繋がらない」と感じたそうです。

「では自己表現に妥協しないレッスンにすると、どうなりそうか?」を想像してもらいました。

すると、「最初は未熟さが逆に目立つだろうが、そこを通過すれば、なりたい自分へと繋がっていく」というイメージを持っていただくことができました。

「科学的英語学習法」も大事にしながら、レッスン内容を見直す

さ、ここからはレッスンの見直しです。出口はちゃんと英語学習コーチングになりました、笑!

これまで毎日のオンライン英会話では、「ビジネス英語のフレーズ学習」を中心にしていたそうです。が、今後は「自己表現に妥協しない」というコンセプトを反映させ「理念を語るなどのオリジナルの内容にする」となりました。

また、プラス30分の勉強をする中でも、「自己表現に妥協しない」というコンセプトを強化するべく「自分の考えを、レッスン前にまとめる時間(ライティング)を取る」ことにしました。

ここには、第二言語習得論(SLA)の「リハーサル」という考え方を組み入れています。

Aさんは、TOEIC800点以上をお持ちで留学経験もあります。ただ、そのような英語上級者さまであっても、「出たこと勝負」で英会話をしていると、英語力のkeepにはなっても、さらに伸びるのには時間がかかります。

一方、いざリアルな英会話練習をする前に「内容を頭の中で組み立てたり、自分で作文する」という「リハーサル」が入ると英語力はより効果的に伸びていくというのが、SLAの一つの考え方です。

Aさんにとって、「自己表現と向き合う」ことと「英語力をより効果的に伸ばす」その両方を満たすのが、この「リハーサル」に当たる30分のライティングになると見立ててご提案しました。すると「単語やフレーズのインプットが大事なのもわかるけど、今はこの取り組みがしっくりくる!」とのことで、無事納得感のある学習の見直しに至りました。

ここで、セッションは終了となりました。

まとめ

こんなに最後までお読みくださり、ありがとうございます!笑

上記は、アドラー心理学の考え方である「認知論」「全体論」「目的論」「主体論」という考え方を反映したメンタルコーチングをしながら、第二言語習得論(SLA)の考え方を踏まえた英語学習コーチングになっています。

(ここまで書いておいて、、、アドラー心理学の説明も、第二言語習得論(SLA)の説明も、一切していないことに気がつきました・・・。不親切な記事になり申し訳ありません!!!!!!!後付けで、どこかでします!)

英会話における「メンタルブロック」をお持ちの方って多いと思います。克服のためには、「場数で慣れていこう」というアプローチももちろん可能です。

ただ、上記の例のように「自己理解をより深める」アプローチはとても有効です。自分自身の扱い方がわかります。ですから、自分で状況を改善する力がアップするのです。

上記が、メンタルコーチングに興味のある英語指導者の皆さまや、英会話でのメンタルブロックを解消したい英語学習者さまの参考になれば幸いです。

最後に。

上記ほど複雑なことは、一切書いてありません!もっとシンプルに、メンタルコーチングと英語学習コーチングの考えを掛け合わせた拙著、2020年7月22日発売です。よろしくお願いいたします^^

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この記事を書いた人

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Yukiko Funabashi

英語学習コーチ / 講師 / MC
MC・ナレーターとして約10年のキャリアを積んだ後、語学コーチングスクールに入社、英語学習コーチへ。在籍中7年で、ビジネスパーソンからエグゼクティブまで約4000人の英語力UPをサポート。2017年4月独立。
エグゼクティブ・ビジネスパーソンを中心にオーダーメイドの英語学習コーチングを提供する傍ら、研修講師ほか、MC・ナレーターとしても活動している。